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『大好き!ともくんと居れば、いつも笑顔で居られるよ』



彼女のその無邪気な表情で語りかける『言葉』と言う魔法は、彼にとってどんな事よりも貴重で、幸せを感じずにはいられないモノだった



彼は、そんな純粋な彼女を愛し、彼にとって人生の全てと言っても過言ではない存在だった


彼は、どんな事があっても、彼女を守り続けると誓った

それは、彼女の偽りのない『笑顔』を、いつまでも大切にしたいと思ったから

それが『自分自身』の為にもなる事だと思ったから・・・














彼女は、限られた時間しかない存在だった


無邪気で、そして偽りのないその笑顔が、もうすぐ消えてしまう事を彼は知っていた


そして彼女も、自らの運命を知っていた




彼がそれを知った時、平静では居られなかった

自分の愛する彼女が、こんなに笑顔が素敵で、なんの罪もない彼女が、何故こうならなければいけないのか・・・



彼はこの世を怨んだ


神様とは、本当に居るのか?


もし居るとしたら、何故こんな残酷な運命をたどわせるのか


彼は言い様の無い感情で、いっぱいになった





しかし彼女は、自らの運命を知っても、いつも笑顔を絶やさなかった



彼女『あたし、凄く幸せだよ!。だって、世界で一番カッコよくて優しいともくんの彼女で居られるから』



彼女のその屈託の無い笑顔と言葉に、彼は自身が暗い気持ち、表情をする訳にもいかないと、彼女の前では泣かないと決めた



彼『世界一可愛くて無邪気な笑顔のなつみが居てくれるだけで、オレは幸せだよ!だからずっと、オレの側に居てくれよな!』



彼女『うん!』




こんなやり取りの後、彼は1人になった時、涙が溢れて止まらなかった


どうして『彼女』なのか


代わってあげられるのなら、代わってあげたいと思った


彼女のその『笑顔』を維持する為なら、彼は自分が身代わりになりたいとも思った


しかし自身には、どうしようも出来ない


『彼女の運命』


それを考えれば考える程、彼はなんとも言えない気持ちになった








彼女『あのね、あたしね・・・夢が有るんだ♪』


彼『どんな夢?』


彼女『うん!あたしね、ともくんを世界で一番ハッピーな男の子にするのが夢なの』


彼『・・・・・』


彼女『あたしって、なんか言ってる事いつも変だよね・・・』


彼『そんな事ないよ!なつみに世界一ハッピーな男にして貰えるなんて、オレは本当に幸せな男だよ!』


彼女『エヘッ・・・良かった』




こんな何でもない様なやり取りが、彼にとってはかけがえの無い『貴重な時間』だった・・・




医者『彼女は既に限界を超えている。しかし彼女の生命力は、キミの存在がとても大きい。本来なら、彼女が今もああやって居られるのは奇跡なんだよ』




彼女は、彼の存在だけで、その生命を繋ぎ止めている状態だった


彼はどんな時でも『笑顔』を絶やさない彼女に、限られた時間の中で『最高の幸せ』を実感させたいと思った


たとえどんな運命の彼女だとしても、その命ある限り、彼女の為に・・・




ある日、彼は彼女の病室を訪れた

その日は、彼女の体調も少し良かった




彼『先生に外泊許可貰ってきたよ。なつみ、今から連れて行きたいところが有るんだ』


彼女『えっ?えっ!?何!?いきなりどうしたの?』


彼『いいからいいから。早く出掛ける準備しよう』


彼女『うん!』





彼は彼女を病室から連れ出した


そして自分の車に乗せた




彼女『ともくんの車に乗るの、何ヵ月ぶりかな?』


彼『そうだなぁ、もう随分前の様な気がするな』


彼女『うん!あたしがまだ元気だった頃、沢山ドライブ行ったよね』


彼『そうだな』


彼女『この車には、ともくんとの思い出が沢山詰まってるよね』


彼『うん・・・』


彼女『・・・ごめんね・・・あたし。こんな事になっちゃって・・・』


彼『・・・・・』


彼女『・・・・・』


彼『とにかく、今日はそう言う暗いのは無しだから!』


彼女『でも・・・』


彼『いつもなつみが言ってるだろ?どんな時でも、笑顔を絶やさない様にしようって』


彼女『・・・そうだね、ごめんね』


彼『・・・・・』




その後、しばらく沈黙が続いた


そしてしばらくして、2人を乗せた車は、とある場所へと着いた




彼女『・・・ここは!・・・』


彼『うん!そう、ここは・・・』












たどり着いたのは、彼が彼女を初めてドライブに連れてきた場所だった


そこには、小高い場所に小さな教会が有った


そう、彼はその教会で、彼女に告白をした思い出の場所だった




彼女『覚えてて・・・くれたんだ・・・』


彼『あの日、この場所での出来事は、忘れた事は無いよ』


彼女『・・・・・』


彼『オレはここで、なつみに愛を誓った』


彼女『・・・・・』


彼『そして、なつみが言った言葉、今でも覚えてるよ』


彼女『・・・え?・・・』


彼『なつみは、オレにこう言ったんだよ』













『世界一、あたしをハッピーにしてくれるなら、あなたの気持ちに応えます。』









彼女『・・・・・』


彼『なつみが、いつもオレを世界一ハッピーな男にすると言っている言葉・・・7年前は逆だったのも覚えてるから』


彼女『・・・・・』


彼『・・・ごめんな、結局なつみを世界一ハッピーな女にする事が出来なかった・・・』


彼女『・・・あたしは』


彼『・・・?』


彼女『あたしは、今この瞬間から、世界一ハッピーな女になれたよ』


彼『・・・・・』


彼女『だって、7年も前の事を・・・ずっと忘れずに覚えて居てくれた・・・あたしがともくんを世界一ハッピーな男にするハズだったのに・・・あたしがともくんに、世界一ハッピーな女にして貰えた!』


彼『・・・うん・・』


彼女『あたし、もうこれ以上の幸せは無いよ』


彼『あのね、今日はこれだけじゃないんだよ』


彼女『・・・?』


彼『はい、これ・・・』


彼女『・・・えっ!?』















彼が彼女の目の前に差し出したのは、ペアリングだった




彼女『・・・・・』


彼『なつみ、今日ここで、オレと結婚してください』


彼女『・・・・・』


彼『・・・やっぱり、ダメかな?』


彼女『なんで?・・・あたしはもうすぐ・・・』


彼『関係ないよ!オレはなつみの命ある限り、なつみを世界一ハッピーな女で居続けさせたいんだ!だからオレは、なつみと最後まで・・・いや、永遠になつみと結ばれたいから』


彼女『・・・・・』


彼『やっぱり・・・ダメかな?』


彼女『・・・ううん・・』


彼『じゃあ!』


彼女『はい、よろしくお願いします』


彼『よかったぁ・・・』


彼女『でも、条件があります』


彼『・・・条件?』


彼女『たとえこの先、あたしにどんな事が有っても、世界一ハッピーな男で居続けてください。そして、いつまでも笑顔を絶やさないでください』


彼『・・・・・』


彼女『それが約束出来ないのなら、このリングは受け取れません』


彼『・・・・・』


彼女『大丈夫だよ!この先どんな事が有っても、あたしはともくんの心の中で生き続けるから。ずっとずっと、ともくんを愛してるから』


彼『・・・わかったよ』


彼女『よかった・・・ともくん、大好き!愛してるよ!』


彼『オレも、なつみを世界一愛してる!』


彼女『エへへッ、あたし、世界一ハッピーな女だよ!』


彼『オレも、世界一ハッピーな男だよ!』













その3ヶ月後、彼女は天国へと旅立った・・・


しかし彼は、彼女との約束を守り、笑顔を絶やす事は無かった


時には、彼女の居ない現実世界で、泣くこともあった・・・


しかしその度に、彼女との約束を思い出した





彼女『いつまでも、笑顔を絶やさないでください』





それは『世界一愛する彼女』との、最後の約束だから・・・


そして彼の心の中では、いつまでも彼女の笑顔と、無邪気な表情が、今でも生き続けている





『あたしね、ともくんを世界一ハッピーな男にする』





その言葉が、いつまでも彼の心の支えになっている・・・