520406



彼女は、夏祭りの大好きな女の子だった


毎年、彼は欠かさず彼女を『夏祭り』に連れていった


『夏祭り』・・・・さまざま有るけれど、彼女は特に『花火大会』が大好きだった


いつも彼女は無邪気な表情で、打ち上げられる花火を眺めていた・・・


そんな打ち上げられる花火を観る彼女の、無邪気な表情を眺めるのが、彼には最高の時間だった・・・





彼女『綺麗だね』


彼『うん・・・





彼女の言う『綺麗』の対象と、彼の言う『綺麗』の対象は、全く別のモノだった・・・


夏祭りに連れて行く事により、彼女のキラキラとした表情を眺めるのが、彼にとっては『夏の風物詩』でもあった


最後の打ち上げ花火が終わって、帰る途中、毎回必ずコンビニによって買うモノがあった・・・










[線香花火]









彼女は決まって、花火大会の後には、シンプルだけど、変化を楽しめる花火を買って、家に帰ってから彼と2人で一緒に楽しむのが日課でもあった





彼女『あのね、線香花火の火玉が、最後まで落ちずに消えたら、願い事が叶うんだよ』


彼『え?そんな話聞いたことが無いよ・・・』


彼女『うん!今あたしが考えた事だから、聞いたこと無いのは当たり前だよ♪』


彼『・・・・・』





そんな無邪気な彼女だからこそ、彼は好きだったのかもしれない


しかし、一度も最後まで火の玉が落ちずに、消えるまで続いた事は無かった・・・







そんな毎年の恒例行事の『夏祭り』も、数年が経つにつれて、彼はあまり重要視しなくなっていった・・・


すなわち、夏祭りに行かない事もあった


彼女が毎年、いつも楽しみにしていた夏祭り


浴衣を着て、水ヨーヨーを持ち、綿菓子を食べながら、大好きな彼と手を繋いで見る打ち上げ花火・・・


彼女にとって、幸せな時間であったであろう・・・






彼女『ねぇ、今年も花火大会には行かないの?』


彼『仕事が忙しくて、休めないんだよ』


彼女『・・・じゃあ、花火大会に連れてってとは言わないから、せめて家で一緒に線香花火だけでもしたいよ・・・』


彼『悪いけど、夜帰って来てからとか、疲れてるから勘弁してくれ!』


彼女『・・・・・・・』








とある週末の日、彼は休日出勤で会社に居た


その日は、彼女が毎年楽しみにしていた夏祭り(花火大会)がある日だった・・・


彼は少し、後悔の念があった


夏祭りに連れていけなくても、せめて家で2人で、線香花火だけでもしたいと言った時に、二つ返事で承諾してあげなかった事・・・




彼は仕事が終わり、帰りにコンビニで線香花火を買った


せめて、これだけでもしてあげようと言う、彼なりの優しさだった







ちょうど帰りがけ、いつもの夏祭りが終わる時間と重なった


沢山の見物客が帰宅するのに歩いている中、見覚えのある浴衣姿の女の子が居た・・・







彼女と同じ浴衣を着た女の子も居るんだなぁって思いながら、すれ違った瞬間・・・


彼は信じられない光景を見た・・・・・







その浴衣姿の女の子は、紛れもなく彼女だった


さらに隣でニコニコ笑いながら、話し掛けているのは、紛れもなく男だった・・・





男の方は何気に楽しそうだったが、彼女の方は楽しげな表情では無かった・・・・・


しかし、彼はそんな彼女の表情等、目には入らなかった





家に帰ってから、コンビニで線香花火を買ったのを思い出した彼は、その買った沢山の線香花火を、庭先でまとめて火を点けた・・・


地面で歪(いびつ)に迸る(ほとばしる)火花


彼は絶望と後悔、そして憎しみが募った・・・




それからしばらくして、彼女が帰ってきた


やけに焦げ臭い庭先に気付いた彼女は、その臭いの場所を見て、全てを悟った・・・







彼女『ごめんなさい・・・』


彼『いや、もう良いんだよ』


彼女『・・・・・』


彼『俺はお前には相応しい男では無かったんだよ』


彼女『そんな事無いから!』


彼『だったら!なんで今日花火大会に行ってたんだよ!ただそれだけならいい!でもよりによって男と仲良さげに手なんか繋いで!!!』


彼女『違うの!あれは・・・』


彼『言い訳なんか聞きたくねーんだよ!!』


彼女『・・・・・』


彼『今まで俺を騙しやがって!お前は最低な女だ!』


彼女『・・・ひどい・・・』


彼『もうお前とはお別れだ!』


彼女『・・・・・』







彼女の目からは、溢れ出す涙でいっぱいになった


そして、彼と彼女の数年の思い出に幕を閉じた・・・







しかしその後、彼女が夏祭りに行った相手の男は、実は彼女の従兄妹だと言う事がわかった


しかし、もう手遅れだった・・・




今年の夏祭りの日、彼は彼女の居ない時を過ごす事になった


彼女はきっと、新しい彼氏といっしょに夏祭りに行くのだと思う・・・


きっと彼女は、さみしかっただけなのだと思う


忙しくても、せめて線香花火だけでも、彼とニコニコしながら楽しみたかったのだろう。







しかし、そんな小さいながらの最高の幸せな時間は、二度と戻る事は無かった。。。






今年も夏祭り(花火大会)の季節がやって来ました。



あなたは、今年の夏祭りは、誰と一緒に行きますか?



どなたと行くにしても、楽しい夏祭りにしなければいけません。










決して、涙を流さない様に・・・。







涙を流す様な思いをする為の、夏祭りではないのだから。。。